【SIPとは】VoIPとの違いや主な機能・メリットデメリット解説

「SIPって何のこと?」
「SIPの仕組みって?」

従来、電話といえばほとんどが電話回線を利用した固定電話でした。しかし、固定電話を持たない若年層も増え、コロナ禍を経てより一層のテレワーク化が進む現代において、SIPを利用した通話ができるインターネット電話が普及し始めています。

とはいえ、SIPについて詳しく理解していない方もいるのではないでしょうか。そこでこの記事では、SIPについての基本知識から、通信が成り立つまでの仕組み、メリットやデメリットについて詳しく解説します。

導入を検討されている方、SIPについて知りたい方は、ぜひ最後まで読んでください。

1. SIPとは

SIPとは、Session Initiation Protocolの頭文字をとった単語で、セッションの開始、管理、および終了を行うためのプロトコルです。
特に音声通話やビデオ通話などの通信に使用されています。電話システムのようなリアルタイム通信をインターネット上で実現するための重要な技術であり、従来の電話システムに比べてコスト効率が高く、柔軟な通信が可能になります。

SIPの基本機能は、ユーザーエージェント(UA)とSIPサーバー間のセッション管理です。UAは、通信の発信者および受信者の役割を果たします。一方、SIPサーバーは、通信の仲介と管理を行います。

異なるメーカーのソフトウェアやハードウェア同士でも通話やビデオ会議ができているのは、このSIPによって送受信の手順などの通信規格が定められているためです。

2. VoIPとの違い

通信の分野で、SIPとともによく登場するのが、VoIPです。
VoIPは、Voice over Internet Protocolの頭文字をとった略称で、音声通信をインターネットプロトコル(IP)を使用して行う技術全般を指します。SIPは、このVoIP技術の中で特にセッションの開始と終了を管理する役割を果たします。簡単に言えば、VoIPは音声データの伝送技術であり、SIPはその伝送を開始・管理するためのプロトコルです。

VoIPは、電話に限らず、動画や音楽のストリーミングなどの幅広い分野で利用されている、音声データの送受信の役割を担うプロトコルです。人の声や音という「アナログデータ」をインターネット環境でやり取りするために「デジタルデータ」に変換し、データを分割、送受信します。

3. SIPの主な機能

SIPは主に以下の機能をもっており、これらを活用することで、通信セッションを制御しております。

  • ユーザーの位置特定
  • ユーザーの可用性確認
  • デバイスのメディア形式の確認
  • セッションの設定と管理

それでは、順に解説します。

(1)ユーザーの位置特定

SIPサーバーで管理される位置情報サービスとドメインネームシステムによって、SIPは、ユーザーがどこにいるかを特定し、通信相手と接続することができます。

ドメインネームシステムは、利用者のIPアドレスなどのユーザー情報を保存しています。
ユーザーは異なるデバイスやネットワークから接続することができ、その際にSIPサーバーがユーザーのIPアドレスを特定し、位置情報を把握します。

これにより、ユーザーはインターネットに接続されていれば、どこからでも通話やビデオチャットを行うことができます。

(2)ユーザーの可用性確認

SIPは、通信相手が現在利用可能かどうかを確認する機能も備えています。これにより、発信者は受信者が通信可能な状態にあるかどうかを事前に知ることができます。

例えば、受信者が他の通話中であったり、ネットワークに接続していない場合、SIPはその情報を発信者に通知します。

(3)デバイスのメディア形式の確認

SIPは、ユーザーのデバイスがどのメディア形式(音声コーデックやビデオ解像度など)に対応しているかを確認します。これにより、音声やビデオのフォーマットが互換性があるかどうかを事前に確認し、通信の品質を保証します。

たとえば、発信者が高解像度のビデオを送信しようとしても、受信者のデバイスがそれに対応していない場合、SIPは自動的に適切なフォーマットに変換します。

(4)セッションの設定と管理

SIPは、セッションの設定、維持、変更、終了を管理します。例えば、AさんとBさんが通話中に、Cさんを追加したい場合、AさんはSIPサーバーにCさんを追加するリクエストを送信します。SIPサーバーは、Cさんの位置情報と可用性を確認し、Cさんをセッションに追加します。

このように、通話中に他の参加者を追加する場合や、通話を別のデバイスに転送する場合も、SIPがその管理を行います。

4. SIPの構成要素

ここではSIPを構成する以下の要素について解説します。

  • ユーザー・エージェント(UA)
  • SIPサーバー

以下、順に解説します。

(1)ユーザー・エージェント(UA)

ユーザー・エージェントは、SIP通信のエンドポイントです。これは、通信を発信するクライアント(UAC)と、通信を受信するサーバー(UAS)の両方の役割を果たします。

例えば、SkypeやZoomなどのソフトフォンアプリは、ユーザーがインターネットを介して音声通話やビデオ通話を行うためのユーザー・エージェントとして機能します。また、オフィスのデスクにあるIP電話機もユーザー・エージェントの一例です。これらの電話機は、SIPプロトコルを使用して通話を発信し、受信します。

(2)SIPサーバー

SIPサーバーの役割を簡単に言うと「インターネット上で通信する端末同士を接続させる」ことです。この役割を果たすために、以下の3つのサーバー機能を持っています。

名称 概要
プロキシサーバー プロキシサーバーは、SIPメッセージを転送し、通信の経路を設定します。例えば、ユーザーAからユーザーBへの通話リクエストを受け取り、そのリクエストをユーザーBのSIPサーバーに転送します。
レジストラサーバー レジストラサーバーは、ユーザーの現在の位置情報を登録し、管理します。ユーザーが新しいIPアドレスでネットワークに接続すると、その情報がレジストラサーバーに登録されます。これにより、他のユーザーがそのユーザーに連絡を取る際に最新の位置情報が使用されます。
リダイレクトサーバー リダイレクトサーバーは、通信を別のサーバーに転送する役割を果たします。例えば、ユーザーAがユーザーBに通話をかける際、リダイレクトサーバーはユーザーBが現在接続している別のSIPサーバーに通話を転送します。

5. SIPの仕組み

ここでは、どのようにSIP通信が成り立っているのか、基本動作を説明します。

クライアントAは、「california.com」ドメイン内のプロキシサーバAにINVITEリクエストを送信し、セッションの確立を試みます。プロキシサーバAはリクエストを受け取り、ステータス100(Trying)を返答してから、「domain.com」内のプロキシサーバBに同じリクエストを転送します。

プロキシサーバBは受け取ったINVITEリクエストを処理し、そのドメイン内に対応する通信先ユーザーIDが存在するかを確認します。存在する場合、プロキシサーバBはクライアントBに対してINVITEリクエストを転送し、プロキシサーバAに対してステータス100を返答します。

クライアントBはINVITEリクエストを受け取り、利用者に呼び出しを通知します。通常は呼び出し音やポップアップ通知が利用され、これをステータス180(Ringing)としてクライアントAに伝えます。

クライアントBの利用者が呼び出しに応じると、ステータス200(OK)がクライアントAに送信され、SDPセッションが開始されます。

6. SIPを使用するメリット

SIPを使用するメリットは主に以下の3つです。

  • 柔軟性が高い
  • コストを抑えることができる
  • テキストも処理できる

それでは、順に解説します。

(1)柔軟性が高い

SIPは非常に柔軟性が高く、オフィスのIP電話機や、自宅のパソコン、スマートフォンなど、異なるデバイス間での通信が可能です。また、SIPは他のプロトコルや技術(例えば、RTPやSDP)と連携することができるため、複雑な通信システムを構築する際にも適しています。

例えば、ユーザーがオフィスのIP電話機から通話を開始し、その後スマートフォンに通話を転送する場合でも、SIPはその柔軟性を活かしてシームレスに通信を続けることができます。また、SIPを使用して音声通話を行う際に、ビデオ会議用のプロトコルと連携してビデオ通話も同時に行うことも可能です。

(2)コストを抑えることができる

SIPを利用することで、通信コストを大幅に削減することができます。従来の電話システムでは、通話ごとに料金が発生しますが、SIPを利用することでインターネット経由での通話が可能となり、特に国際通話や長距離通話のコストを削減できます。

(3)テキストも処理できる

SIPは、音声やビデオ通話だけでなく、テキスト通信もサポートしています。従来の電話回線では実現できなかった、チャット機能やプレゼンス情報(利用者状態)など、多彩な機能を組み合わせることで、コミュニケーションをより便利で効率的にします。

例えば、通話中にテキストメッセージを送信することで、追加の情報や資料を共有することができ、コミュニケーションの質を向上させることができます。

7. SIPのデメリット

SIPを利用する際の注意点やデメリットは主に以下の3つです。

  • 通信環境に影響される
  • 専門知識が必要となる
  • ゲートウェイや帯域幅に負荷がかかる

それでは、順に解説します。

(1)通信環境に影響される

SIPはインターネット上でのやり取りが前提となるため、インターネット接続が不安定な場合、SIP通信の品質も不安定になります。そのため、そもそもインターネットが接続されていない地域やクライアントとのコミュニケーションはSIPでは実装できません。

(2)専門知識が必要となる

SIPを効果的に利用するためには、ある程度の専門知識が必要です。SIPの設定やトラブルシューティングには、ネットワークやプロトコルに関する理解が求められます。

例えば、SIP通信を許可するために、ファイアウォールやルーターの設定を適切に行う必要があります。また、通話品質の低下や接続の問題が発生した場合、その原因を特定し、解決するための知識とスキルが必要です。

(3)ゲートウェイや帯域幅に負荷がかかる

多数のSIP通話が同時に発生する場合、ゲートウェイ(SIPサーバーやルーターなど)に高い負荷がかかり、パフォーマンスが低下することがあります。これにより、通話品質の低下や接続の遅延が発生することがあります。

また、高品質な音声やビデオ通話は、多くの帯域幅を消費します。特にビデオ通話の場合、大量のデータが送受信されるため、ネットワーク全体の帯域幅に影響を与えることがあります。

SIPの導入について

この記事ではSIPの仕組みやVoIPとの違い、SIPの構成要素などを解説しました。SIPを利用することで、柔軟でコスト効率の高い通信が実現できますが、通信環境や専門知識、ネットワーク負荷に関するデメリットにも注意が必要です。これらの要素を適切に管理することで、SIPの利点を最大限に活用し、効果的な通信システムを構築することができます。

ソフトフロントジャパンでは、SIPを活用したコミュニケーションソリューションを幅広く提供しています。また、SIPの技術と最新のトレンドに精通しており、お客様のビジネスニーズに合わせたカスタマイズされたソリューションを設計・実装いたします。SIPの導入についてはソフトフロントジャパンにご相談ください。

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