IP電話の仕組みとは?種類から固定電話との違いまで完全ガイド

「IP電話の仕組みってどうなっているんだろう?」
「IP電話のメリットやデメリットを知りたい。」

IP電話の導入を検討しており、IP電話の仕組みについて気になる方も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、IP電話の仕組みやIP電話のメリット・デメリットについて解説します。IP電話と固定電話の違いも解説するので、検討する際には参考にしてください。

1. IP電話とは?

IP電話とは、インターネットプロトコル(IP)を使用して音声通話を行う技術です。従来の電話回線を使用せず、インターネット回線を通じて音声データを送受信するVoIP(Voice over Internet Protocol)に基づいています。IP電話は、パソコンやスマートフォン、専用の固定電話機などさまざまなデバイスで利用できるのが特徴です。

IP電話は従来の電話システムと比べてコストが安く、多機能で柔軟な対応が可能なため、近年多くの企業や家庭で導入が進んでいます。通話料金が距離に関係なく一定であることや、さまざまな業務システムとの連携が容易である点も、IP電話の大きな魅力です。

2. IP電話の仕組み

IP電話の基本的な仕組みは、音声をデジタルデータに変換し、インターネットを通じて送信することにあります。具体的には以下のようなプロセスを経て通話が行われます。

  • VoIPで音声をデジタル信号に変換する
  • VoIPゲートウェイでデジタル信号をIPパケットに変換する
  • IPパケットを相手に送信する
  • IPパケットをVoIPゲートウェイでデジタル信号に変換する
  • 電話機やスマホで音声情報を復元する

(1)VoIPで音声をデジタル信号に変換する

まずIP電話では電話機やマイクから入力された音声信号(発信者の音声)をVoIPを使ってデジタル信号に変換します。

(2)VoIPゲートウェイでデジタル信号をIPパケットに変換する

デジタル信号に変換された音声データをインターネット経由で送信するためには、これをIPパケットに変換する必要があります。IPはInternet Protocolの略称で、インターネット上でデータをやり取りするときのルールを意味します。

この過程では、まずデジタル音声データを一定のサイズの小分けに分割します。次に、各小分けごとにヘッダ情報を追加します。ヘッダには送信元と宛先のIPアドレス、パケットの順序情報などが含まれます。最後に、VoIPでは通常、RTP(Real-time Transport Protocol)やUDP(User Datagram Protocol)といったプロトコルが使用されます。

これにより、パケットの送信順序やタイミングが管理され、リアルタイムの音声通信が可能になります。

(3)IPパケットを相手に送信する

作成されたIPパケットは、ネットワークを通じて相手に送信されます。この過程では、ネットワークルーターがIPパケットを適切な経路で目的地に向けて転送します。

これはインターネットのインフラを利用するため、パケットは複数のノードを経由して目的地に到達します。この間にパケットロスや遅延が発生する可能性がありますが、適切なプロトコル管理により、これらの問題は最小限に抑えられます。

(4)IPパケットをVoIPゲートウェイでデジタル信号に変換する

受信側のVoIPゲートウェイでは、受け取ったIPパケットを再度デジタル音声信号に変換します。まず、受信したIPパケットを元の順序に並べ替えて再構築します。次に、再構築されたパケットからデジタル音声データを抽出します。これにより、音声データが元のデジタル信号として復元されます。

(5)電話機やスマホで音声情報を復元する

最後に、VoIPゲートウェイによってIPパケットから変換されたデジタル信号は電話機やスマホで音声情報に復元されます。これで相手も発信者の声を認識し、聞き取ることができるようになります。

この一連のプロセスにより、VoIP技術を用いたインターネットを通じた音声通信が実現されます。

3. IP電話の種類

IP電話には次の3つの種類があります。

  • 電話番号を持たないIP電話
  • 050番号を使って発着信するIP電話
  • 市外局番(03や06など)を使って発着信するIP電話

それぞれの種類の特徴を解説します。

(1)電話番号を持たないIP電話

電話番号を持たないIP電話は、LINEやSkype、Viber Messenger、Discord、WeChat、ハングアウト、Messengerなどを利用するものです。

これらのアプリは、電話番号を持たずに音声通話を行うことができます。同じアプリを利用するユーザー同士であれば無料通話が可能ですが、固定電話や携帯電話への発信はできない場合が多いです。このタイプのIP電話は、インターネット環境さえあれば利用できるため、海外とのコミュニケーションや特定のグループ内での連絡手段として広く利用されています。

(2)050番号を使って発着信するIP電話

050型IP電話は、「050+通信事業者の識別番号+加入者番号」で構成される11桁の番号を使用します。050型IP電話は、どこから発信しても050から始まる番号となるため、発信地を特定することができません。また、050型のIP電話同士では無料通話ができる場合が多く、コストを抑えたい企業や個人にとってメリットになります。

(3)市外局番(03や06など)を使って発着信するIP電話

市外局番を使う形式のIP電話もあります。03や06など市外局番を使用した光回線(光ファイバー回線)を通じて通話をします。構成は「市外局番 (2桁)+ 市内局番(4桁) –+加入者(4桁)番号」で構成されています。10桁を<0ABCDE-FGHJ>と表すことから、<0ABJ番号>と呼ぶこともあります。

<0ABJ番号>を使う場合には総務省指定の「接続品質」「総合品質」「安定品質」「ネットワーク品質」基準を満たさなければならないため、<0ABJ番号>の通話品質は非常に優れ、固定電話と同じように安定し、遅延が起こりにくくなっています。

4. IP電話を導入するメリット

ここではIP電話を導入する以下のメリットについて解説します。

  • コスト削減
  • 短時間での導入
  • 拡張性と柔軟性

順に解説します。

(1)コスト削減

固定電話に比べると、IP電話の方が基本料、通話料金が安くなる可能性があります。特にインターネット回線を使用するIP電話では、遠方との通話でも料金が高くなることがありません。海外との通話料金も安くなります。そのため、全国展開する企業、海外に拠点がある企業などにはIP電話の利用がおすすめです。個人的にも遠方に知り合いや友人がいる方は、IP電話で通話した方がお得でしょう。

また、インターネット回線が通じていれば、配線工事は不要です。これまで使用していた電話機やPC・スマートフォンなども使えるので、電話機購入費も掛かりません。

(2)短時間での導入

IP電話はインターネット環境さえ整っていれば使え、その場合配線工事が不要です。従業員数や拠点数の増減による工事や撤去も必要ないため、短時間で導入ができます。

また、LINEやSkypeなどのIP電話なら、アプリをインストールして即日利用も可能で、050番号を使ったIP電話でも最短1日で利用できるサービスを提供している事業者もあります。

(3)拡張性と柔軟性

拡張性と柔軟性に優れるのがIP電話です。拡張性では、様々なシステムやアプリケーションとの連携が可能で、次のようなこともできます。

顧客管理システムと連携し、接続先の電話番号から顧客情報をパソコンに表示させる
CTIシステムと連携し、自動振り分けや通話録音などの機能を利用できる
ビデオ通話・会議通話やチャット機能も利用できる

また、IP電話は、電話機、PC、スマートフォンなどさまざまなデバイスで利用でき、ビデオ通話にも対応可能です。テレワークの導入や外回り営業などが多い企業にとって、柔軟な働き方を支援します。さらに、複数拠点を一元管理できるため、大企業の組織簡素化や人件費削減にも寄与します。

5. IP電話のデメリット3選

IP電話導入のメリットを見てみましたが、以下のようなデメリットもあります。

  • 停電時に利用できない
  • 通信品質が環境に依存する
  • 緊急通報が制限される場合がある

順に解説します。

(1)停電時に利用できない

IP電話はインターネット回線を利用するため、電力供給が必要です。そのため、停電時には使用できなくなります。

固定電話(アナログ回線)と異なり、停電時にバックアップ電源がない場合は通話が不可能となるため、緊急時の対策が必要です。

(2)通信品質が環境に依存する

IP電話はインターネット回線を使用した通話なので、通信品質はインターネット環境の影響を受けます。

インターネット通信が不安定になると、音質が落ちたり、通話が途切れたり、聞き取りにくくなったりなどの現象も生じやすいです。インターネットが繋がらなくなれば、通信そのものもできません。

通常時は問題なく通信できるIP電話ですが、安定したインターネット接続が確保できる環境が必要です。

(3)緊急通報が制限される場合がある

“050”から始まる電話番号のIP電話では、110番(警察への緊急通報)や119番(消防への緊急通報)が使えません。緊急通報では、電話を掛けた人の位置情報が伝わるようになっていて、通報を受けた側がすぐに現場に直行できるようになっています。

ところが、”050”から始まる電話番号のIP電話では位置情報の取得ができないために、緊急通報へ発信できません。なお、市外局番から始まる電話番号が使えるIP電話の場合は、緊急通報ができます。

6. IP電話と固定電話の違い

ここまでIP電話の仕組みやメリット・デメリットを解説しましたが、従来の固定電話との違いにはどのようなものがあるのでしょうか。ここではIP電話と固定電話の以下の違いについて解説します。

  • 回線の安定度と通話品質
  • 導入費用や料金
  • 電話番号や機能
  • インフラ要件

順に解説します。

(1)回線の安定度と通話品質

IP電話はインターネット回線を利用するため、通信品質が安定しないことがあると解説しましたが、一方で固定電話は通信専用の回線を利用していることから、通話品質が安定しています。ただ、IP電話でも<0ABJ番号>を使うものだと、固定電話並みの通信品質を維持できるでしょう。

なお、IP電話の通信品質については、総務省が事業者をランク分けしています。ランクはA・B・Cの3種類で、Aランクの事業者であれば通信安定度が非常に良いとされています。

(2)導入費用や料金

すでに説明したように、IP電話はインターネット回線さえ通じていれば、回線工事は不要で、電話機の購入も必要ないため、初期費用も安く、基本料も通話料も抑えられます。

固定電話の場合、電話加入権に申し込む手間が発生したり、回線工事などの費用や通話料もIP電話より割高です。

それぞれの費用について表にしましたので、導入時の参考にしてください。

  IP電話 固定電話
導入費用 2,000円~3,000円前後(ネット回線がすでにある場合) 35,000円前後(電話加入権を新規購入した場合)
基本料金 500円前後 1,500円~2,000円前後
通話料金 距離によって変動しない 距離によって変動する

引用元:IP電話とは?固定電話との違いや仕組み、メリットも解説

(3)電話番号や機能

IP電話は0ABJ型、050型、電話番号不要型などさまざまな種類があり、企業や個人のニーズに応じた選択が可能です。特に、0ABJ型IP電話は固定電話と同様に110番や119番への発信ができます

一方、固定電話は従来の市外局番+市内局番+加入者番号で構成され、緊急通報やFAX機能など、幅広い用途に対応可能です。

(4)インフラ要件

IP電話はインターネット環境が整っていれば、配線工事が不要で、すぐに導入できる点が利点です。

一方で、固定電話はアナログ回線やISDN回線を利用するため、専用の配線が必要です。導入には配線工事が必要で、設置場所が限定されることがあります。

IP電話のメリット・デメリットを理解した上で導入しよう

この記事では、IP電話の仕組みや種類、メリット・デメリット、固定電話との違いなどを解説しました。

IP電話はコスト削減や柔軟なシステム連携、迅速な導入が可能であり、特に企業にとっては業務効率化や経費削減に寄与します。一方で、停電時の利用不可や通信品質の環境依存、セキュリティリスクなどのデメリットも存在します。

IP電話を導入する際には、これらの利点と欠点を理解し、通信をする上で適切な環境を整えることが重要です。

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